アカイトリ
「お初にお目にかかる、朱い鳥よ。私は現当主の隼人と申す」
背筋を伸ばし、隼人は深々と天花に頭を下げた。
手の甲で唇を染めた颯太の血をぐい、と拭う。
天花が目を細めて隼人の顔を見つめた。
「碧…お前は…颯太より碧の血が濃いな」
「その通りに、私の方が碧い鳥の血は濃い。けれど。この子の、この髪の色を見なさい。この子の、藍色の瞳を見なさい。碧い鳥が神を想い、始祖を愛しながら孕んだ。この子は、碧…神…始祖、全ての要素を備えて生まれてきたのだよ」
――あまりにも突然の隼人の告白に、天花は眉を潜める。
「どういう…」
隼人は天花の側に回り込み、その両肩を抱いて微笑んだ。
「碧は神の力の半分を受け継いで生まれたという。あの子は神の子であり、碧い鳥と始祖の子でもあるのだ。だからあのような髪の色に生まれ、人知の美しさを備えて生まれてきたのだよ」
――颯太の浅い寝息だけが響く部屋。
「死ぬはずがない。お前と出会い、あの子は残りの命の使い方を見つけた。あの子は死なない。誰よりも愛されているのだから。お前から…碧い鳥の葵から……」
つっと天花の大きな朱い瞳から涙が伝う。
隼人は立ち上がり、障子を開けて、闇が迫ってくる空を見上げた。
「その子を助けてくれて感謝している。今日のところはこれで…」
「…天花だ」
肩越しに振り返ると、天花が隼人から譲り受けた塗り薬を傷口に塗りながら一瞬だけ顔を上げた。
「わたしの名は天花という。これからは、そう呼べ」
うっすらと隼人は微笑んだ。
「天花か。楽園に咲く花のように、か?あの子らしいな」
含み笑いをしつつ去って行った隼人を見送ると、颯太が小さく呻いた
「てん、か……」
「わたしは、ここにいる…颯太…」
握った手に応える力。
「お前は奇跡の存在だ、颯太…」
背筋を伸ばし、隼人は深々と天花に頭を下げた。
手の甲で唇を染めた颯太の血をぐい、と拭う。
天花が目を細めて隼人の顔を見つめた。
「碧…お前は…颯太より碧の血が濃いな」
「その通りに、私の方が碧い鳥の血は濃い。けれど。この子の、この髪の色を見なさい。この子の、藍色の瞳を見なさい。碧い鳥が神を想い、始祖を愛しながら孕んだ。この子は、碧…神…始祖、全ての要素を備えて生まれてきたのだよ」
――あまりにも突然の隼人の告白に、天花は眉を潜める。
「どういう…」
隼人は天花の側に回り込み、その両肩を抱いて微笑んだ。
「碧は神の力の半分を受け継いで生まれたという。あの子は神の子であり、碧い鳥と始祖の子でもあるのだ。だからあのような髪の色に生まれ、人知の美しさを備えて生まれてきたのだよ」
――颯太の浅い寝息だけが響く部屋。
「死ぬはずがない。お前と出会い、あの子は残りの命の使い方を見つけた。あの子は死なない。誰よりも愛されているのだから。お前から…碧い鳥の葵から……」
つっと天花の大きな朱い瞳から涙が伝う。
隼人は立ち上がり、障子を開けて、闇が迫ってくる空を見上げた。
「その子を助けてくれて感謝している。今日のところはこれで…」
「…天花だ」
肩越しに振り返ると、天花が隼人から譲り受けた塗り薬を傷口に塗りながら一瞬だけ顔を上げた。
「わたしの名は天花という。これからは、そう呼べ」
うっすらと隼人は微笑んだ。
「天花か。楽園に咲く花のように、か?あの子らしいな」
含み笑いをしつつ去って行った隼人を見送ると、颯太が小さく呻いた
「てん、か……」
「わたしは、ここにいる…颯太…」
握った手に応える力。
「お前は奇跡の存在だ、颯太…」