もしも君が助けてくれたら
私は片腕を押さえながらシップやら消毒液やらが入っている箱を探すために立ち上がった。

が、うまく体に力が入らなくて倒れそうなところをまともに立っている曉に助けてもらうことになった。

「大丈夫か?」

「大丈夫だって」

それよりも、夏だ。

あの額から出ている血をどうにかしないと。

昔から救急箱の場所はよく知っていた。

こういうことがあるからシップやらなんやらは買いだめしている。

そしてその場所も何百回と開けたことだろうか。

薔薇の模様の入った棚の左側を開けて下から三番目の段から木箱を取り出した。

大きさはさほど大きくない。

けど、小さくもない。

ほどほどのサイズ。

それを取りだそうと手を伸ばすと、私よりも長い手がそれを掴んだ。

「これか?」

曉はそう言いながら救急箱を取り出した。

「うん。それ」

お礼を言うべきか迷ったけど、頼んでもいないのにとったから、それは曉の独断だから別にいいかな、なんてひねくれた考え方をしてしまった。

私は救急箱を持っている曉と一緒に夏の元へ戻った。

夏はようやく意識を取り戻し、痛みに顔を歪ませていた。

それから私に言ったのか、曉に言ったのか分からなかったけど、夏が呟いた言葉は虚しく響いた。

「いてぇなぁ・・・、心がさ・・・」

そう。

一番痛いのは、ボコボコにされた体じゃなくて心のほうだ。

父親に向かって父親じゃないと叫び、子供に向かって八つ当たりをする。

そんな家族、ここ以外、どこにあるのだろうか。

いつも思っていた。

幸せそうな家族をみるたびに、羨ましいと思っていた。

確かに小さい頃は皆仲はよかったし、幸せだと感じていた。

それでも、平凡な家族が羨ましかった。

お父さんのせいで遊園地など目立ちやすいところは行けず、お母さんのせいで旅行に行くことは一度もなく、夏休みはただ家で勉強ばかりだった。

そんな私たちをお母さんはきちんとわかっていた。

だからお母さんは優しかった。

けど、お父さんは違った。

仕事でのストレスやらなんやらを私たちにぶつけ、女遊びも激しかった。
お母さんがいるのに遊んでいた。

子供ができたと言われてお金を払っているお父さんをみていたこともあった。
離婚の原因は、それとも言っていいのかもしれない。

「夏。明日学校休む?」

「いや。これくらい大丈夫」

「そっか。・・・曉、ありがとう。もう、大丈夫だから。今日のことは忘れて」

今、私は上手に笑えてるだろうか。

とにかく、これ以上曉を柊家の問題に巻き込みたくなくて強引に曉を家から追い出した。

「じゃぁ、また明日、学校で」

曉もそれをわかってか、なにも言わなかった。

「あぁ。・・・また、明日」

何かいいたそうな曉に後ろめたさがあったものの、私は家の扉を閉めた。
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