週末の薬指

不安と戸惑いと、夏弥の言葉の意味を測り兼ねるこの思いが体中に溢れる。

突然現れて一緒にランチを楽しんで、美月 梓と一緒に沖縄だと聞かされて。

仕事だとはいっても、夏弥を気に入ってるとあからさまに言い切っているらしい彼女と一緒だと聞いて、不安にならないわけじゃない。『行かないで』って、言っていいものなら何度でも言うのに。

「俺の方が不安なんだよ」

「ん?」

指先の熱が一気に熱くなった。夏弥から注がれる、ぎゅっと私の手を握る力が、一層強くなる。

「美月 梓とは何もないけど、それでも花緒にとってはいい気分じゃないのはわかってる。
それなのに、一緒に沖縄くんだりまで駆り出されて、一緒に仕事して。
俺の事あきれて、結婚もやめたいって思うんじゃないかって、俺は不安なんだよ。
ちっせーだろ、俺って」

「そんな……あきれるなんて、そんなことないけど」

確かにいい気持ちではない。いくら夏弥にその気がなくても、あんなに綺麗な女性が側にいるって考えるだけで落ち込む。

『離れてよ』ってその場に行って叫びたいって思うけど。

同じ社会人として、やっぱりここは我慢しなきゃって思う気持ちが先にきて、素直になれない。

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