略奪愛の結末
命の期限
運命を変える電話をもらったのは
暑い夏から秋に変わる頃だった。

「篤朗くん?真紀だけど 今いいかな。」

「うん これから帰るとこだけど……。
真紀さん この間はありがとう。マリもやっと
重い腰をあげてくれてホッとしたとこ。」

「それじゃ ちょっと寄れる?
マリちゃんには適当に言ってうちに来ることは
絶対に言わないで欲しいんだけど。
駅まで迎えに行くから 何時の地下鉄か教えて。」


何だろう・・・・・。
急に不安になった。

マリは胃薬を出してもらって
ずいぶん楽になって食欲も少し戻ったと
喜んでいた。
いろいろ検査もしてくれて

結局 目は開けられずにつぶったままで
必死に耐えてきたけど
飲む方はその何倍も苦しいらしく

真紀のおかげで よかったと胸をなでおろしていた。


明日 結果を聞きに行くと言っていた。


何かあったのかな。

少しくらい気持ちになったけど 薬で緩和されて
美味しそうに食事をとるマリを見てると
大したこともないように感じた。


駅の出口に 兄が迎えに来ていた。


「なんか悪いな。」

「いや~何か知らないけど真紀が迎えに行けって
言うからさ 俺はもう 真紀の言いつけを
よく守る夫になってしまったよ。」

あのプライドが高くて 嫌味な兄が
別人のようになっていた。

夫婦ってすごいな…
そう思わせる兄貴の変貌ぶりに吹き出してしまった。
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