略奪愛の結末
時間をとって主治医に会いに行った。

「家族の方とっって先日言ったんだけど
一人できちゃって…困った患者さんですよ。
わがままだし頑固だし。」

主治医が笑った。
「すみません ご迷惑かけて
今日来たのはホスピスのことで・・・・。」

「うん。あまり治療も効果がなくてね
正直そういう治療に切り替えて行ってもいいかなとは
思ってはいたんだけど どうしても地方に行くって
言い張って 聞きましたか?」

「驚きました。何を考えてんだろうって。」

「いい病院ですけどね
遠いでしょう ご家族だってしょっちゅう来られないし。」

「迎えにだけ来てくれって言うんです。」

主治医は大きくため息をついた。

「頑固だからね。何か考えはあるようだけど
一応紹介する形はとってるんだけど
年明けには行きたいっていうんですよね。」

「年明けですか?こっちにもいい病院あるんですよね。」

「もちろん勧めましたけどね
聞き入れないんです。風景がいいとか言って。」

「どしたものでしょうか…。
妻はもう治療しても無駄なのですか?」

状況は想像よりはるかに悪かった。
その話を俺には言わなかった。

マリに何度も先生からの話はないのかと
確認はしていたけれど

「まさか・・・・。」

「治療しないとなると…春まで持つかどうか。」

俺は頭が真っ白になった。

「ご家族でよく話合ってください。
ただ本人の意思はつよかったので それを覆すのは
結構大変かなとは思います。」

マリの頑固なのは誰に似たんだろう。


この頑固さが飛勇に遺伝してないといいんだけど

そんなことを考えて直帰だったので
飛勇のサッカーを見に行った。
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