海宝堂〜海の皇女〜
13.最強の敵
シーファは髪をかきあげると、アーターの巨体を足で踏みつけた。

「…シーファあっ!
無事だったんだなっ!」

「ありがとうっ!結構ピンチだったのよ。
助かったわ。」

こぼれんばかりの笑顔で駆け寄るリュートとニーナ。
アーターを飛び越えてシーファを囲む。

ガルはというと…じっとシーファを見ていた。

鎧を着ている…無理に着させられたのか?
あの巨体をあんなにあっさりと…
何より、例え敵でも倒れた者を足げにするか…?

たくさんの疑問が浮かんでは、シーファの様子を観察した。

「……ふっ…」

シーファの口から笑いが漏れる。

「…シーファ?」

「ピンチにまで追い込むなんて…命令違反よ。」

アーターを見下ろすシーファの目は、凍りつくほど冷たいものだった。

「――!!!
お前らっ!離れろっ!」

「え?」
「は?」

「…遅いよ、ガル。」

シーファが顔の辺りに上げた手で軽く何かを投げる仕草をした。

すると、後ろの滝から二匹の水の竜が現れ、リュートとニーナめがけて飛んできた。

「うぉっ!」
「きゃあっ!」

竜に襲われ、2人は立っていた場所からガルの所まで飛ばされた。
ガルはかばってやることすら出来なかった。

「…いて…」
「…な、に…?」

「やっぱり、しぶとい。」

「シーファ!なんでこんなことをっ!」

ガルの頭の中ではもう答えは出ていた。
しかし、聞かずにはいられなかった。

シーファはにっこりと笑う。

「なんでって…あんた達は私が殺すの。
………人間が。」

そこにいるのは、もう、シーファではなかった。
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