デュッセルドルフの針金師たち後編
第8章オリエント急行

イスタンブール

日本円で300万円ほどのマルクが残った。
石松も縁日もとにかく無事だった。石松の
真横のアラブ人がいきなり頭を殴られ、重体。

石松は返り血を浴びた。あと一人アラブ人が
ナイフで刺されて重体ということだった。
新聞にはアラブ人と地元のトラブルとだけ報じ

てあった。さあ旅に出るぞ。何もかも忘れて
マメタンと二人で、約束だ。とりあえず、
ドイツを出よう。石松はイスラエルへ、縁日は

スペインへ。別れのスキヤキパーティで醤油が
手に入らなくて水炊き、それもたれなし。
早く旅に出ろということだ。

オリエントエクスプレスにデュッセルの駅から乗る。
オーストリアを抜けるまではまさに定刻どおりに列車
は進んでいたが。ユーゴに入るともう1時間も遅れている。

関係ないところで列車はよく止まる。それでも二人だけと
コンパートメントでとにかく2日間二人ともぐっすりと眠り
続けていた。そしてついに着いたぞトルコ、イスタンブール。

1週間ほど大バザールの近くの安ホテルに泊まって、毎日
シシカバブとガラタ橋のいわしのから揚げなどをほうばり
ながら大バザールを歩き回った。チャイを飲み、毎日5回

のコーランのうめき声を聞きながら・・・・・・。
町中に毎日5回も突然と鳴り響くコーランのスピーカーから
の大声。イスラムはそのたびにその場に立ち止まりメッカに

向かって大地にひざまづき祈りをささげる。これではとても
かなわない。さすが砂漠の宗教だ。骨の髄までイスラムは
染み込んでいる。生活法でもあるのだ
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