デュッセルドルフの針金師たち後編

石松と再会

目標も定まりコペンでわっと全てを吐き出して、すっきり
したのかマメタンはとてもいい顔色に戻った。大阪漫才の
片割れが是非われもお仲間にと付いてくることになった。

彼の名はオオツキ。オサムに二つ年上だ。車の整備士でも
ありおもろい男でミュンヘンで車を買います是非と運転手
を買って出た。その運転手つき3人でコペンを出発する。

しばらくはユース泊まりでぼちぼちと南へ下ろうか。まず
はデュッセルへ戻ることにした。アルトシュタット。
あれ?石松がいるではないか。イスラエルも危険が一杯で

早めに帰ってきたとのこと。石松はかたくなにデュッセル
でやると決心していた。さあ、さらに材料を買い増しし、
商品製作に入る。まだ数十万円は残っていたのだ。

売り歩きながらひたすら作りまくって10月までに1万本
の商品をストックしなければならない。

大阪出身のオオツキさんは商品作りは全く不器用でやろう
としない。車の事は詳しいのに、販売だけを是非やらせて
くれという。初級ドイツ語のレッスンが始まった。

6ページほどのメモにまとめて、後々のためにさらに改良
し洗練されたものになった。ポリスの見つけ方から
ワンタッチ逃亡の要領。つかまった時の言い逃れの方法

とか、かなりユニークな極秘販売マニュアルだ。1週間
ほどで準備完了。久しぶりにアルトに出してみる。
オオツキさんが関西なまりのドイツ語で、

「ビッテシェーン。ツェーンマルク。
買わんかいな。これ。ダンケ」

と叫んでいる。300マルクを売る。
ポリスも来なかったが見知らぬ日本人が増えて、
もう第二世代という感じだ。
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