デュッセルドルフの針金師たち後編

ハイデルベルグのお城の中で

ハイデルベルクはこじんまりとした美しい
森と川とに囲まれたすばらしい学園都市だ。
ユースから川を渡り大学内の学生監獄を見る。

理論闘争のきわみ、つるし上げられた学生が
ここに軟禁された。学生達の格調高い落書き
が四方の壁にびっしりと書かれている。

さしずめ欧州全共闘のアジトみたいだ。
お城の道を登る。城の入り口。狭いところに
3人のヒッピーが広げていた。どの作品も今

ひとつだ。ケッテを出せば売れるのにと思いつ
つ場所もなさそうなのでそのまま城内に入る。
ハイデルベルクのお城の見晴らし場の広い

スペース。町並みが全貌できる。観光客で一杯。
「あ、ここいいじゃん」
すぐに広げた。すると突然。

「ナイン。ニッヒト、ベック!」(あかん、帰れ!)
と怖い感じでドイツ人が声をかけてきた。見ると
先ほど入り口にいたヒッピーだ。ずっと我々を

つけてきたらしい。雰囲気で分かるのだ。
「アッソウ!」(ああそう)
といってすぐにしまった。彼はいろいろと情報を

教えてくれた。ヒッピーにも礼儀がある。ここは
国宝級のお城なので城内での販売行為はまかり
ならん、とのことのようだ。なるほど、姫路城の

中でやるようなものか。すいませんでした。
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