デュッセルドルフの針金師たち後編
第14章ロマンチック街道

ローテンベルグ

大槻は憧れのカルマンギアを買ってオサムたちの
バンについてきた。バイロイトに向かう。
ワーグナーの音楽祭で有名なこの町の唯一の地下道

はほんとによく売れた。町の人もとても好意的で、
ポリスもフリー。とうとう新聞社がやってきて
写真取り。日本の芸術家の卵来る。すばらしき

ワイヤーワークという見出しだった。新聞に載る
のはこれで二回目だ。

ウルムという町で夜遅く着いて教会の前、ここの
教会はやたら天高くそびえていて、ちょうどいい、

寝袋に包まって車中泊。夜明けとともにひとのざわ
めき、なんと朝市のど真ん中に車を止めていたのだ。

ローテンベルクからフッセンのお城までを
”ロマンチック街道”という。なだらかな丘陵が続く
南ドイツの田園地帯だ。観光バスが結構走っている。

給油していた時大型バスが止まって、降りてきたのは
全部日本人の団体だった。

ローテンベルクはこじんまりとした、まわりを城壁で
囲まれた中世そのままの城塞都市だ。もちろん下は
石畳。町の中央時計台はからくり人形。回りには手作り

工房がたくさんあってバウムクーヘンとかを売っている。
城壁に登ってみると人がすれ違えるくらいの通路に、外向
きは凹型の戦闘用壁角部分は小高く見張り櫓になっている。

ぐるっと一周しても知れている。今でも中世騎士団ごっこ
がやれそうだ。ところが地下室に下りて驚いた。拷問部屋
がいくつもある。よくもこう考えられるなと思えるほど、

色んな責め器具が並んでいる。獄死した死人の絶叫が聞こ
えてきそうだ。そこらじゅうに血のりの後が今でもこびり
ついていそうで息が詰まる。オエーッ。
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