デュッセルドルフの針金師たち後編

フランクフルトにて

ミュンヘンに戻る。車を真っ赤なワーゲン
ポストカーに買い換えた。床を二段にして
下にびっしりと在庫を入れるようにした。

サイドと後ろの窓を塞いだので外からは全く
中が見えない。簡易トイレもつけて優雅な広
い製作と寝室兼用のキャンピングカーになった。

オオツキさんは小銭がたまったので一度コペン
に戻りたいという。11月にデュッセルで再会
することを約して彼は北へと旅立った。

オサムとマメタンはひとまずフランクフルトに
材料を仕入れに向かった。フランクのユースは
マイン川沿いにある。繁華街にも近い。

川床が駐車場になっていてユースにはいつも
日本人が一杯。次の晩明け方に、といっても
午前3時ごろ。バンで熟睡していたら、

外で歌声が聞こえた。数十人で歌っている。
よく耳を澄ますとどうも日本語のようだ。
我々ものそのそと起きだした。

『戦争を知らずに僕らは生まれた 〜♪』
間違いない日本人だ。
「どうしたんですか?」

「到着が遅れてダブルブッキングになって、
ユースに泊まれなくなったんですよ」

誰かが味噌汁を持ってきてくれた。温かくて美味しい。

「今はやってるんですかその歌?」
「ええ、こういうのもありますよ。
「ゆかたの君はススキのかんざし〜♪」

「なんですかそれ?」
「よしだたくろう」
「知りません。ほんとにほんとです」

2年もたてばだいぶ変わってるだろうな。
二人は皆と一緒に朝まで歌を歌った。
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