デュッセルドルフの針金師たち後編

アテネ

情報を得てアテネへの学生フライトを買う。
往復料金が3分の1の値段で買える。
そのためには学生証を作らなければいけない。

早速英文で文書を作りタイプ屋にタイプを
打ってもらう。

『右のもには太陽大学工学部ギリシャ建築科
の三年生であることを証明する』

印鑑はもちろん十円玉の平等院だ。これには
算用数字が使用されていないのだ。

何の問題もなく学生フライトを買うことができた。
コーヒールンバを大声で歌いながら、意気揚々と
イスタンブールをあとにした。

ジェット機は小型で数十人乗り。機内から見た
エーゲ海の海の青さはすこぶる美しかった。
冬だというのに光がまぶしく感じる。

石造りの白さとのコントラストは一生忘れる事は
できない。昔からずっとこんな感じだったのだろう。

アテネの空港に降り立つと全てがギリシャ文字ばかり
でアルファベットが全くない。ここへ来るまではどの
国でも結構アルファベットは浸透していたはずなのに。

オリンポスの丘、パルテノンの神殿、このあたりから
夜空の星を見上げギリシャ神話が生まれたのか?
あのソクラテス、プラトンの哲学が語られ、民主政治

が生まれたのか。昔は皆暇だったんだろうか?今の世、テレビ
が普及してからというもの、夜の語らいの場はなくなった。
四大文明の地は近代史では今ひとつなのはどうしてだろう?

手塚治虫のアニメ”クレオパトラ”が上映されていたので
見に行ったら、なんと胸は黒ベタ、腰も黒ベタ。黒ベタ
だらけの厳しいアニメになっていた。

同じヨーロッパでも北と南じゃこうも違うのか。
昔のギリシャはもっとおおらかだったはずだ。
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