デュッセルドルフの針金師たち後編
第16章三度目の正直

ゲナウゾーエッセンス

フランクフルトへ戻り北を目指す。
チューリンゲンの森が国境沿いに続く。
西のシュバルツバルトはザールの工場煙

の酸性雨のために名物の黒きもみの木が
枯れかけてて頂上付近は苗木が育たず
誠に無残であったが、チューリンゲンの

もみの森林は実に見事であった。その中心
フルダの町、ここがよく売れた。我々一組
だけで全くのフリー。オートキャンプ場に

泊まり一週間ほど居座ってみよう、とても
良い所だ。夏のバカンスの時期でもあって
多くのファミリーがいた。キャンプ場は

車ごと乗り込んでテントを張ったり車中で
寝たり。大型キャンピングカーもたくさん
来ている。炊事場、シャワー、トイレが

完備していて、売店もある。イギリス人の
家族と仲良くなってご馳走するから来いと
言われていったら、ブラートブルストと

ポンフリだった。翌日焼き飯を持っていく
とものすごくうまいうまいと感激していた。
そういえば、トランプのカードをぱらぱらと

切ったら皆びっくりしてもう一度やってくれ
なんていうこともあったな。そうしたある日。
にんにくをいっぱいいれて、野菜炒めを作っ

ていたら、ドイツ人の高校生3人組が、ちょ
っと離れた所で肩を組んで、

「ゲナウゾー、エッセンス!」

と3回繰り返して、花いちもんめみたいな事をする。

『なんやそれ?文句があるならちゃんと言うてこい』

と思いつつ見とれていたら、さらに3回繰り返して
去っていった。いまだにその意味は分からない。
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