デュッセルドルフの針金師たち後編

面接

さあ11月20日の面接当日になった。
ユースの入り口脇に『針金販売面接会場こちら→』
と日本語で書いたパネルを置かせてもらう。

面接会場は石松達がいつも製作をしていた右サイドの軒下だ。
長テーブルをひとつ置いて椅子を2人分、軒下に5人が座った。
11時半準備完了。誰も来ない。”逃げ足の速い”がまずかったかな?

それでも1ヶ月1000ドルは破格だ。ちょっとやばそうだけど
針金細工の路上販売ということでそれなりに想像は着くと思うのだが。
やはり面接に来るものはそれ相応気合が入ってなければ来れない。

12時を回った。やはり誰も来ない。パネルを見てこようかとオサムが
ユースの入り口に向かうと、3人ほどがパネルを見ている。

「面接?」
「ええ、受付どこでしょうか?」
「受付なし。そこで面接やってます。どうぞ」

3人の若者を案内してオオツキ達の待つテーブルにつれてきた。
オオツキさんが面接の主任で両脇がオガワとボンボンだ。
オサムとマメタンはちょっと離れて同じ軒下に座っている。

パネルの前に山男風の二人の若者が来た。こちらへ手招きし
オサムの横に座らせる。オオツキさんの説明にじっと聞き耳を立てる。

「いつ来たの?英語独語片言でもできますか?ま、特訓しますから
何とかなります。少しやばいですよ。実は・・・・・」

3人の若者の顔は真剣になってオオツキさんの説明を聞いている。
5分ほどの説明で、

「・・・ではその気になったら夕方5時にもう一度ここにきてください」

3人と入れ代わりに山男風の2人が立った。すでに次々と若者が増えて
なんとなく忙しくなってきた。ほとんどが着いて間なしの短髪の学生だ。
一人あるいは二人連れで3時ごろまでに20人ほどを面接した。

人が途切れてパネルをはずす。オオツキさんご苦労さん。

「さあ、5時に何人戻ってくるやろか?」
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