デュッセルドルフの針金師たち後編
やっと終わってホテルへ戻る。やはりその晩高熱が出た。
出発は明日の夕方。エジプトエアーで、

ローマ→カイロ→ボンベイ→バンコク→香港→羽田だ。
各都市3泊の新婚旅行そのものだ。格安チケットなので
キャンセルはできない。ま、いいか。どっと疲れが出たんだろう。

つききりで看病をしたかいがあって何とか翌昼までには熱も下がり
食欲も湧いてきた。よかった、何とかいけそう。さあ、最後だ。
お別れだ。いろんなことがあった。横浜を出てからの、目次を

めくるように、あっという間の3年間がよみがえる。ほんとにもう
最後の最後だ。しばらくはもうこれまい。皆に見送られて
コペンの空港から、ついに飛び立った。

ワゴンと在庫はオガワとボンボンに譲り。今ここに現金が600万円
もある。帰国して大学に復学したら、がむしゃらに勉強をしよう。今は
学問にとても飢えている。マメタンは運転免許を取ると決心していた。

そういえば、オサムがずっと一人で運転してたもんな。

「いまどこらへんやろか?」
「デュッセルの真上みたいよ」

オサムは心の中で南無妙法蓮華経、おおきにとお題目をあげた。
< 60 / 61 >

この作品をシェア

pagetop