怪談短編集


 店の前に、見張りはいなかった。手動ドアのノブには厳重にチェーンが巻きつけられ、大きな南京錠で施錠されている。

「しまったなあ。何か持ってこれば良かった」

 急いだせいで、スマホ以外何ももっていない。他の入口を探すしかないだろう。

 サブリナは、店の裏にまわった。思った通り、裏口がある。こっちはチェーンなどが何一つない。ただ、補助錠はしてあるのだろう。押しても引いても開かない。

 初歩的だが、サブリナはポニーテールに差し込んだアメリカピンを引き抜いた。

 それを鍵穴に差し込み、動かす。カシャン、という音がして、ドアを引くと、開いた。

 そのまま、中に入る。階段がドアの前にあった。

 階段に足をかけ、下りる。


 「閉じ込められた」


 慎重に、下りる。
< 47 / 195 >

この作品をシェア

pagetop