神様、僕の初恋に栄光を。
「じゃあ、この部屋よ。優ちゃん。」



案内をしていた看護士がふと足を止めて目の前の病室を指差した。


父親と母親は「じゃぁまたこんど見舞いに行くからね」
といってそそくさ帰ってしまった。



「・・・はい、分かりました」



これから毎日同じ学校の人と会わなくてはいけない。
とても苦しい。


私はふてくされた顔で看護士にうなずいた。



「隣のベットの白倉くんは、今お友達が来てて屋上へ行ってるの。少し待っててね」



看護士はふてぶてしい私に目を合わそうともせず、早くここから立ち去りたい
という顔で早口でしゃべる。



「・・・はあ・・。」




私は別に会いたくないんだけど、という言葉を押し込めて返事をした。


この看護士はついこの前ここに入ったようだ。見た感じ。


明らかに私をめんどくさそうな患者として見ている。




てゆーか隣のベットの人って男子なんだ・・・白倉っていうのか。



同時に、屋上まで行けるんなら入院なんてしなくていいんじゃないの?とも思った。




「じゃあ何かあったら呼んでね」




―――そう言って看護師はため息を一つつき、出ていった。



病室には私1人しかいない・・・


私は病室のベッドに飛び込み、仰向けになって無機質な天井を仰いだ。


・・・そうしていると、日頃ためこんでいた気持ちが、どんどん抑えられなくなっていた。



「・・・・嫌い・・・」



ぽつりと呟くと、余計に気持ちはあふれてきた。



「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い・・・!みんな大っ嫌い!!」



その内、涙まででてきて、抑えきれなくなってきた。

ベッドのシーツが、涙でぬれる。



「父さんも母さんも嫌い!私がどんなに学校に行きたかったのか知りもしないで・・・」



本当は嫌いなわけがない。けれど、この空しさをどこにぶつければいい?


この病への怒りを、どこにやればいい?


心で理屈をならべて、言葉で沢山の物に対して怒りをぶつける。



「病院なんか大っっ嫌い!!ついでに大空高もキライ!私だって、みんなと同じように通えるもん!!病気も大嫌い!私がこんな風になったのもみんな病気が悪いん・・・」



「そのくらいにしておくといいよ。」


「!!」



叫びまくって声が枯れてきたころ、病室のドアがガラっとあき、


少しばかり低音の声が私の耳を通った。


声のした方を振り向くと、顔立ちが端整な美しい男の子が立っていた。


彼は松葉杖で立っていた。


背は・・・高い。175cmくらいというところだろうか。


黒髪の少し長めの髪を後ろでちょっとだけ縛っている彼は、

黒と青の混ざったような瞳で私を見据え、口を開いた。









瞳の色は、暗い色で染まっていた。


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