容疑者
第一章 牢獄

「あんたなんか、生まなければ良かった」










ずっと、ずっと、そう言われて育ってきた。





私を産んで暫くして、母親と父親は離婚した。

その原因は、

「育児ノイローゼ」。



母親がそれでおかしくなって、父親は家を出た。



それからというもの、私は毎日のように暴力をふるわれ、
ろくな食事もさせてもらえず、
幼稚園にも行かせてもらえないばかりか、

完全に外界から隔離されてしまった。


だから、私は5歳になるまで「空」というものがこの世にあることなんて知らなかったし、道路があって車が走ってることも知らなかったし、外にはたくさんのビルがあることも知らなかった。

窓の無いせまい団地の一室で、ひっそりと暮らしていた。

そしていつしか母親はほんのたまにしか帰ってこなくなった。


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