なりすまし
「またお前のイノセントスピリットか?」

確か、イノセントには「お人好」しみたいな意味があった気がする。

にしても、我ながらヒドいネーミングセンスだ。

「イノセント?俺はそんなに無邪気か?」

ん……。お人好しなんて意味はなかったか?
まあそれはいい。

「脩は、首を突っ込んで何をするつもりなんだ?イヤな聞き方をするなら、お前は何が目的だ?」


どうも俺は苛々していたのかもしれない。

言い方に棘があったのは否定できないし、何より脩の俺を見る目がそれを物語っていた。


「まあ、理由を挙げろと言われても、少し難しいな。なにせ俺と彼らには直接の接点はないし……」

そこで言葉を切った脩は少し上を見ながらこう続けた。

「でも、困ったときはお互い様って言うしな。いつか俺が困ったときのための『貸しづくり』とでも銘打っとこうか」


俺は口元が緩むのが分かった。脩らしい。

こいつは絶対に自分の優しさを前に出さない。

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