風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「・・・じゃあ、・・・自分のアパートに戻っても良いですか?」

今度はそう来るか。

流石に俺でもダメージ大きいぞ。

彼女のアパートは俺が元通りにした。

濡れた壁は張替え、壊れた家電製品は最新式に取り替えた。

だが、彼女に早く自分のアパートに戻って欲しいからじゃない。

1つでも彼女の心配事を取り除きたかっただけだ。

だからこれも却下。

「前にも言ったが今一緒に住んでるのに、わざわざ別々に住むのは不自然だろう?」

俺は適当(適切の意味だぞ)な理由を付けて、彼女の要望を却下する。


「・・・・・・。」


隣で彼女はとてつもなく不満顔。

いったい彼女は何が気に入らないんだ?

「だったら・・・、ちゃんと家に帰って来て下さい。
あそこは陽斗さんの家です。
私と顔合わせたくないなら、私が出て行きますから。」

ああ、そういうことか。

彼女の発言の意図が分かり、俺は少しホッとする。

少なくとも俺と一緒に居たくない訳ではないのだから。


< 77 / 141 >

この作品をシェア

pagetop