魔王に甘いくちづけを【完】
「参ったな・・・」
男の耳がピクピクと動く。
歌声に誘われるように、森の中を歩いて行く。
「ちっ・・・窓を開けておいたのは、失敗だったな・・・」
家を出る際にあちこちで見た眠り込む使用人の姿。
数時間は起きないだろう。
魔力ある歌声は、奥の方から響いてくる。
目の前にあるのは、行く手を阻むような大きな岩。
この向こうから歌声は聞こえてくる。
この先にあるのは、瑠璃の泉だ。
男は、手慣れた様子ですいすいと大岩を登って行き、向こうを覗き込んだ。
四方を大きな岩に囲まれ、まるでその存在を隠すように木立に囲まれた、深く碧い瑠璃色の泉。
向こうの岩の隙間から絶え間なく水がこんこんと湧き出、涸れることなく水を湛えている。
その小さな泉で唄の乙女が水浴びをしている。
―――見つけたぞ・・・。
だが、困ったことに、すこぶる機嫌がいいようだ。
唄を辞めてくれるだろうか。
唄の乙女は機嫌がいいと際限なく歌い続ける。
・・・しかし、初めての遭遇だが、見惚れるように美しいな。
魔唄を歌わなければこのまま捕え、我らが国王にお傍女として献上したいくらいだ―――
艶々とした豊かな碧い髪。
美しく膝まで届きそうに長いそれは、碧い泉の中に浸され、薄青い指先が丁寧に梳いている。
滑らかで綺麗な薄青い肌が描く、柔らかな体の曲線。
ラベンダー色の唇が動き、魔唄を風に乗せて森の中へと運ばせる。
柔らかく響く可憐な歌声と、たおやかな美しい旋律。
瑠璃の森中に届けられるそれは、すべての生ける者を眠りへと誘う。
唄の乙女の子守唄。
気丈な男の意識も保つのがやっとだ。
たまに体がゆらぎ、意識がほわんっと遠のく。
男の耳がピクピクと動く。
歌声に誘われるように、森の中を歩いて行く。
「ちっ・・・窓を開けておいたのは、失敗だったな・・・」
家を出る際にあちこちで見た眠り込む使用人の姿。
数時間は起きないだろう。
魔力ある歌声は、奥の方から響いてくる。
目の前にあるのは、行く手を阻むような大きな岩。
この向こうから歌声は聞こえてくる。
この先にあるのは、瑠璃の泉だ。
男は、手慣れた様子ですいすいと大岩を登って行き、向こうを覗き込んだ。
四方を大きな岩に囲まれ、まるでその存在を隠すように木立に囲まれた、深く碧い瑠璃色の泉。
向こうの岩の隙間から絶え間なく水がこんこんと湧き出、涸れることなく水を湛えている。
その小さな泉で唄の乙女が水浴びをしている。
―――見つけたぞ・・・。
だが、困ったことに、すこぶる機嫌がいいようだ。
唄を辞めてくれるだろうか。
唄の乙女は機嫌がいいと際限なく歌い続ける。
・・・しかし、初めての遭遇だが、見惚れるように美しいな。
魔唄を歌わなければこのまま捕え、我らが国王にお傍女として献上したいくらいだ―――
艶々とした豊かな碧い髪。
美しく膝まで届きそうに長いそれは、碧い泉の中に浸され、薄青い指先が丁寧に梳いている。
滑らかで綺麗な薄青い肌が描く、柔らかな体の曲線。
ラベンダー色の唇が動き、魔唄を風に乗せて森の中へと運ばせる。
柔らかく響く可憐な歌声と、たおやかな美しい旋律。
瑠璃の森中に届けられるそれは、すべての生ける者を眠りへと誘う。
唄の乙女の子守唄。
気丈な男の意識も保つのがやっとだ。
たまに体がゆらぎ、意識がほわんっと遠のく。