魔王に甘いくちづけを【完】
「・・ん?ラヴル・・・って、まさか、あの、吸血族のラヴル・ヴェスタか?」


バルの問いかけに無言で頷くリリィ。

驚き固まったバルの後を継いで、すかさずジークがリリィに問いかける。


「今、ルミナって言ったか?」


その問いにも無言で頷く。


「・・・お前、ここが何処の国か分かってないのか?」

「え・・・?ここ、ロゥヴェルじゃないの?」



バルとジークは顔を見合わせた。

「バル様、これは・・」「あぁ、そうだな」

と互いに呟くように言ったあとリリィに向き直った。

二人とも眉を寄せ、なんだか辛そうな表情をしている。



「あーっと・・・、自己紹介がまだだったな・・・?俺は、バル。こいつは、ジークだ。それにもう一人、外にザキっていうのがいる。お前の名前は?」

「・・・リリィです。あ、それからこの方は、ユリアさんです」


リリィの紹介を受けて、バルはベッドの中のユリアの寝顔を改めて見て、ブラウンの瞳を一瞬見開いた。

脳裏にオークション会場での出来事が甦る。


―――この娘は、あの時の・・・こんな形で再会するとは―――


「―――よし、リリィ。まず、落ち着こうか。ここに座ってくれ」


バルはジークが持ってきた椅子にリリィを誘導し座らせた。

目線を合わせるため正面に跪く。


「いいか。リリィ、落ち着いて聞くんだ」


ただならぬ空気を感じるのか、リリィは神妙な顔付きで頷く。

心を乱さないよう気を使い、なるべくゆっくりとした口調で話すよう努める。


「ここは君のいた国、ロゥヴェルじゃない。ここは・・・ラッツィオ、だ」


「ラッツィオ!?うそ・・・」


ガタンと大きな音を立てつつ立ち上がり、驚きの声を出すリリィ。

両手は口に当てられ、瞳を丸く見開かせ、うそ・・・と再び呟いた。


―――そんな遠くまで飛んでいたなんて―――


「そうだ。どうやってここまで来たのか知らないが。ロゥヴェルのルミナまで歩いて行こうと思ったら、男の脚でも2日はかかるぞ」


「とても怪我人を抱えては行けないな?分かるだろう。暫くここに居るしかないんだ」


「うそっ・・・私、夢中で飛んだの・・・。だって、逃げなくちゃって思って、必死で・・・どうしようっ・・・ラヴル様っ―――私、なんて、遠い場所に―――」
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