魔王に甘いくちづけを【完】
その頃、旅に出たバルの一行は。
「お気を付け下さい、バル様、右です!」
占師サナの声が洞窟の中に木霊する。
シュン・・と音を立てたバルの爪が、黒い皮膚を引き裂く。
ギィィィ・・・と断末魔の声を上げて、妖魔の姿が煙のように消えていく。
ここは険しい山を越えて辿り着く辺境の地、狭間の洞窟と呼ばれる場所。
満月の夜、最速の速さでここに着いた一行は、目的地に辿り着くのに肝心な場所、しかも最も危険と言われてる2か所のうちの最初の一つを通り抜けようとしていた。
ヘカテの魔力の影響とバルたちの強い生気に惹かれ、普段ならば簡単には出てこない狭間の世界にいる妖魔たちが、次から次へと壁の中から出現していた。
首から下げた簡易台に水晶玉を乗せ、それを覗きながら予め出てくる場所を予想し指示を飛ばしているのは占師サナ。
集中してるため馬の手綱は引くことが出来ない。
それをしっかりと誘導してるのは、3頭分の綱を引くザキ。
「しかし、バル様。これでは、キリがありませんね」
先頭を行くバルと共に道を切り開くのは、隼のブラッド。
「あぁ、だが、仕方ない。行くにはこの道しかないんだ」
次々に襲ってくる妖魔の目的は、バル達の新鮮な生気を吸うこと。
やせ細った体に目だけがギラギラと輝いて、涎を垂らしながら襲いかかってくる。
それを剣と爪で薙ぎ払いながら進んで行く。
騎士団員は最後方を担い、バル達が仕留め損ねた妖魔と馬を攻撃してくるのをひたすら片付けていた。
「しかし、本当にここで宜しいのですか。私が聞き及んでおります言い伝えに寄りますと、他にも扉はある様ですが」
うっとおしそうに舌打ちをしながら、ズバン、と飛びかかってきた妖魔の首をはねるブラッド。
妖魔の断末魔の叫びと、指示を飛ばすサナの声。
バルとブラッドの話し声などで、洞窟の中は耳を塞ぎたくなるほどの喧騒な状態。
横から飛びかかってくるのを、腕の一振りで倒したバルは、周りを見回して皆の様子を確認した。
休みなく薙ぎ払ってるため、次第に皆の息も上がってきている。
そろそろ、扉が見えて来ないとまずい状態だ。
「厄介な場所ですまんな。だが、王家の先祖から伝わる扉は、ここにある。現王もここを通ったんだ。行くには一番楽で確率のいい場所と言われている。他の場所だと、違う意味で厄介らしいんだ」
「それはどういうことですか?」
「私もよく知らないんだが、水没していたり、とんでもない番人がいたりするらしい」
「バル様!もうすぐ、扉の場所に辿り着きます」
サナの声が後ろから響き、ちかちかと光る空間が、進む先に見えてきた。
その辺りには、何故か妖魔は近寄ってこない。
ギィィィ・・と叫び声を上げながら、眩しげに眼を瞑って逃げていく。
さっきまでとは打って変わった静けさが、一行を包み込む。
「これが、扉か・・・」
「案外小さなものなのですね」
皆の声から、コレで通り抜けられるのか、という疑問が読み取れる。
「心配するな、これが大きくなるらしい」
バルは深呼吸をして乱れた息を整え、光の場所に手をかざし、王家に伝わっている口上を述べ始めた。
「私は、ラッツィオの王子バルリークと申す―――・・・」
光が、徐々に強くなって、バルたちを包み込んでいった。
「お気を付け下さい、バル様、右です!」
占師サナの声が洞窟の中に木霊する。
シュン・・と音を立てたバルの爪が、黒い皮膚を引き裂く。
ギィィィ・・・と断末魔の声を上げて、妖魔の姿が煙のように消えていく。
ここは険しい山を越えて辿り着く辺境の地、狭間の洞窟と呼ばれる場所。
満月の夜、最速の速さでここに着いた一行は、目的地に辿り着くのに肝心な場所、しかも最も危険と言われてる2か所のうちの最初の一つを通り抜けようとしていた。
ヘカテの魔力の影響とバルたちの強い生気に惹かれ、普段ならば簡単には出てこない狭間の世界にいる妖魔たちが、次から次へと壁の中から出現していた。
首から下げた簡易台に水晶玉を乗せ、それを覗きながら予め出てくる場所を予想し指示を飛ばしているのは占師サナ。
集中してるため馬の手綱は引くことが出来ない。
それをしっかりと誘導してるのは、3頭分の綱を引くザキ。
「しかし、バル様。これでは、キリがありませんね」
先頭を行くバルと共に道を切り開くのは、隼のブラッド。
「あぁ、だが、仕方ない。行くにはこの道しかないんだ」
次々に襲ってくる妖魔の目的は、バル達の新鮮な生気を吸うこと。
やせ細った体に目だけがギラギラと輝いて、涎を垂らしながら襲いかかってくる。
それを剣と爪で薙ぎ払いながら進んで行く。
騎士団員は最後方を担い、バル達が仕留め損ねた妖魔と馬を攻撃してくるのをひたすら片付けていた。
「しかし、本当にここで宜しいのですか。私が聞き及んでおります言い伝えに寄りますと、他にも扉はある様ですが」
うっとおしそうに舌打ちをしながら、ズバン、と飛びかかってきた妖魔の首をはねるブラッド。
妖魔の断末魔の叫びと、指示を飛ばすサナの声。
バルとブラッドの話し声などで、洞窟の中は耳を塞ぎたくなるほどの喧騒な状態。
横から飛びかかってくるのを、腕の一振りで倒したバルは、周りを見回して皆の様子を確認した。
休みなく薙ぎ払ってるため、次第に皆の息も上がってきている。
そろそろ、扉が見えて来ないとまずい状態だ。
「厄介な場所ですまんな。だが、王家の先祖から伝わる扉は、ここにある。現王もここを通ったんだ。行くには一番楽で確率のいい場所と言われている。他の場所だと、違う意味で厄介らしいんだ」
「それはどういうことですか?」
「私もよく知らないんだが、水没していたり、とんでもない番人がいたりするらしい」
「バル様!もうすぐ、扉の場所に辿り着きます」
サナの声が後ろから響き、ちかちかと光る空間が、進む先に見えてきた。
その辺りには、何故か妖魔は近寄ってこない。
ギィィィ・・と叫び声を上げながら、眩しげに眼を瞑って逃げていく。
さっきまでとは打って変わった静けさが、一行を包み込む。
「これが、扉か・・・」
「案外小さなものなのですね」
皆の声から、コレで通り抜けられるのか、という疑問が読み取れる。
「心配するな、これが大きくなるらしい」
バルは深呼吸をして乱れた息を整え、光の場所に手をかざし、王家に伝わっている口上を述べ始めた。
「私は、ラッツィオの王子バルリークと申す―――・・・」
光が、徐々に強くなって、バルたちを包み込んでいった。