転校生は憧れの人
「わ、悪いけど俺、下で待っとくわ」
「どうしたの、滝川くん」
「何かわからへんねんけど、突然の腹痛が俺を襲ってきて。うぅっ。……嗚呼、残念やけど皆で楽しんでこいよな」
お腹を押さえながら、滝川くんは絞るように声をだす。
そっか……腹痛なら、残念だけど仕方ないよね。
「あ。怜佑……アンタまさか、高所恐怖し……んん!」
「ち、違うわボケ! それだけは絶対ないからな! ありえん、ありえん! 俺、めっちゃ観覧車楽しみにしとってんからな」
必死になって梓ちゃんの口を塞ぐ滝川くんは、明らかに動揺している。
「へぇー。滝川って、そうなんだ」
「うっさい、黙れ」
憐くんに弱みを握られてしまった彼には、いつものように憐くんと張り合う強さが見られなかった。
「じ、じゃあな!」
滝川くんはそれだけ言い残し、逃げるようにして列を外れた。