恋のレシピの作り方
「いえ、特に用事はないです」


「そうですか、ちょっとお付き合いしていただきたいところがあるんですけど、仕事が終わったらロビーで待ち合わせしましょう」


「は、はい……」


 それだけ言うと、羽村はもう一度にっこり笑って自分の持ち場に戻っていった。
 奈央は意外な人物からの誘いに戸惑いを隠せずにいた。


(羽村さんがいきなり誘ってくるなんて……きっと何かあるに違いない)


 ―――反射的に警鐘が鳴る。

 けれど、なぜか悪意じみたものは一切感じられなかった。だから誘いを受けた。けれど、羽村は心から安心できる人でもない。

(あ~! 考えるのやめやめ!)


 考えすぎだと自分に言い聞かせて、奈央は仕事に戻った。
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