恋のレシピの作り方
(私は……私は一条さんのことが好き……だからもっと傍にいたいし、もっと知りたい)

 受話器を置く手の甲をじっと見つめながら、奈央は自分の気持ちを再確認した。今まで気づいていたのに気づかないふりをして、仕事に没頭してきたが、それもそろそろ限界を感じ始めていた。
 何をしていても一条を目で追ってしまう。厨房に姿が見えないだけで、どうしたのだろうかと気がかりで仕事に集中できなくなりそうになる。


(彼のために私ができること、それは……)

「はぁ……やめよう」


 奈央は受話器から手を離すと、考えても仕方のないこと全てを洗い流すために、そのままバスルームへ向かった―――。
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