恋のレシピの作り方
 確かに、現実逃避したいくらい信じがたい生田の光景を目の当たりにした。おそらく生田は何かよからぬことを企てている―――。

(ここに連れてきてくれたのは……もしかして私のため? それとも―――)



「お前をここに一回連れてきたいって思ってた……」

「え……? 私を?」

「何があった?」


 奈央は一条が自分に気遣ってくれているとわかって嬉しい反面、一番心配なのはあなたです……と、内心そう叫んでいた。
 
 いつも一条はそうだ。
 
 本当はつらくて押しつぶされそうになっているのに、部下のことばかり気遣って、己を顧みない……。奈央はそんな一条だからこそ、一条を想う気持ちに囚われてしまう。


「私、嫌なんです……一条さん」



「なんだよ、いきなり」



 言葉を選んでる場合ではない。


 そう思ったら、奈央は頭の中にあった言葉が飛び出していた。
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