恋のレシピの作り方
「おい、何を考えているんだ?」


 一条の部屋から見える夜景を、ぼんやり眺めながら物思いに耽っていると、突如一条の声がして我に返った。


 背後からからやんわりと腕を回されて、まるで壊れ物を扱うようにそっと抱きしめられる。そして、不意に首筋に落とされたキスの感触に奈央は小さく肩を竦めた。

「こっち向けよ……」

 ―――キスされる。

 その甘い予感に、奈央はゆっくりと肩ごしに振り返ると、顎にそっと手を添えられて口づけられた。


「ん……」

 どこまでも優しく、熱く蕩けそうなキスに奈央の身体から力が抜け始める。

 唇がそっと離れると、吸い込まれそうな一条の瞳に息を呑んだ。今にも破裂しそうな心臓の鼓動は激しく波打っている。恥ずかしいくらい穿つ鼓動を聞かれてしまうのではないかと、奈央は無性に恥ずかしくなって思わず俯いた。

「こっち向けって」

「あ……」

 そして、再び唇が重なると甘い痺れを腰に感じて、気がつくと奈央は貪欲に一条を求めていた。
 お互いのくぐもった声を聞きながら、奈央は陶酔の波に飲まれ、息もできないくらい溺れた。


「あ……一条さん」


「名前、呼べよ奈央……二人きりの時は許してやる」

 ニヤリと口元で笑う一条に、奈央は恍惚となりながらその名前を呼んだ。


「司……さん」


 ―――二人きりの時は許してやる。 

 ぶっきらぼうで不遜で傲慢でも、今は一条の全てが愛しかった。





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