恋のレシピの作り方
「おい! お前、何でこのタイミングで肉焼いてんだよ? 早すぎるだろ!」


「す、すみません!」



 突然、耳に飛び込んできた怒鳴り声に奈央の肩が思わず跳ねた。

 羽村と同じくらいの長身で、遠目でもわかる端整な顔立ちの男が腕を組みながらあれこれ指示を出しているのが見える。

 その姿はシェフの中でも随一目立っていて、不思議と奈央は目が離せなくなっていた。


「いいか? ウェイターが客の進み具合見てんだから、お前の勘でなんでもやるなよ、わかったら―――ん?」

 喰い入るような奈央の視線に気づいたのか、その男がこっちに近づいてきた。

「あぁ、今日から入るって言ってた新人か、って女?」

(やっぱり来た……)
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