ラブ・ストーリー~可愛くない女~
「‥癖のあるテキーラが、レモンの酸味とホワイトキュラソーの甘みでバランスが取れている。そして、この塩加減。シンプルなのに深みがある‥素晴らしい‥羽山くん、さすがだよ。」


「‥ありがとうございます。」


少し興奮気味のお父さんに、康介さんは小さく頭を下げた。


「このマルガリータに免じて‥少しだけお話させてもらえますか?」


康介さんの落ち着いた口調に、正直のお父さんは静かに頷いた。


「‥僕は過去に‥恋人を‥大切な人を失いました。その日、彼女の側に居れば彼女を失わずに済んだのに‥何度そう思ったかわかりません。」


康介さん‥?


康介さんのあまりにも悲痛な表情に‥私は胸が痛くなった。


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