ラブ・ストーリー～可愛くない女～

「僕は彼女を守ることが出来ず、そして彼女は‥優しく微笑みながら‥この世から去っていきました。」


康介さんは持っていたシェーカーをコトンと置いた。


「山下様もご存知の通り、マルガリータは、発案者が一緒に狩りに行って流れ弾に当たって亡くなった恋人を偲んで作られたという説があります。」


康介さんは正直に視線を移した。


「マルガリータのグラスには塩を付けますが‥ある諸説によると‥マルガリータは“涙の味”だと言う人もいます。‥山下さんはいつもこの店でマルガリータを飲んでいました。」


正直のお父さんがハッとした顔をすると、正直は俯いた。


「僕は彼女を失ってから‥ただひたすらにマルガリータを作っていました。このマルガリータは‥大切な人を失った者にとって、心地の良い“涙の味”になってしまいました。」


康介さんは悲しそうに微笑み、マルガリータをもう一杯作り始めた。