Dreamers-夢物語-


「士、また事故前のこと考えてたの?」

「え…ま、まぁね」


蒸し暑い外。
どんなに薄着をしたって、すぐに汗が肌に滲む。
道を歩きながら、郁は呆れたように聞いてきた。
郁はあたしに記憶がないことを知っている。
事故に遭った当時も郁はあたしと一緒にいたからだ。
あたしが気になってるのは、あの手紙なんだ。
名古屋から届いていた手紙。
記憶がないから事故前に送られてきたと思う。
宛名はあたしで、送り主は“廉"って書いてあって。
内容とかは町に戻ったら会うとか、必ず夢叶えようとか、家族のこととかが綴られていて。
昔のあたしとどんな仲だったんやら。
その“廉"って子。
それだけが1番気になることなの。
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