夢の外へ
「明日香…。

明日香…。

明日香…」

うわごとのように私の名前を呟きながら、タカマサがこちらに向かって歩いてくる。

逃げたいけど、脚が震えて何もできない。

「明日香…。

頼むから…僕だけのものになってくれ。

僕のために死んでくれ!」

タカマサが刃物を片手に突進してきた。

怖くて目を閉じた。

「明日香!」

ザクッ…

「きゃーっ!」

再びあがった悲鳴に、目を開ける。

「――ち、千景…?」

私の目の前にいたのは、千景だった。

タカマサが驚いている。

それから目をそらすように、足元を見た。

――パタタ…

鮮血が、落ちていた。

刃物が、千景の背中に刺さっている。

「取り押さえろー!」

誰かの怒鳴り声が聞こえて、その場にいた男たちがタカマサに集まった。
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