夢の外へ
「――ちょっ、出てって…!」

同時に、彼が裸であることに気づいた。

当たり前か。

バスルームにいるんだから。

パジャマなんか着ていたら、おかしいに決まってる。

「甘いな」

「はっ?」

千景に何を言われたのかわからなかった。

「そのボディーソープ」

ああ、そう言うことか。

千景の言うことはいちいち足りない。

主語がない。

「使ってちゃ、変?」

そう聞いた私に、千景は静かに首を横に振った。

「明日香が何を使おうが、それはお前の勝手だろ。

俺が口出しするほどの問題じゃない」

わかっている。

でも、いざ千景から言われると胸が痛くなった。

気にしない。

気にしない。
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