キミが望むのなら


この時も顔は見えなかったけど、悠君の気持ちは自然と分かった。


悲しい、辛い……そんな気持ち。


「で、でもっ!悠君も毎日早く帰ってるのは、ここでお手伝いをしてるからでしょ?だったら信頼されてないわけじゃ……」


「違うんだよ……」


「え……?」


「俺はここの跡取り、つまり4代目だから、仕方なく手伝って勉強してたんだ」


「っ……」


「それがわかってたのかな……?昨日、ついに言われたよ……」


「……」



「『あなたはもう跡取りでもなんでもありません。自由に生きなさい』って……」


クシャっと髪を掴む姿が、あたしの心をギュッと締め付ける。


悠君が苦しそうだと、あたしも苦しくなる……


「ははっ、見放されちゃった。俺……」



どんな気持ちで、こんなこと言ってるんだろ……?


あたしには到底理解できないほどの苦しみ……


「ど……うするの?」


「え?」


「本当にそのままでいいの?」


「……どういう意味?」


「だからっ、このまま跡取りを諦めていいの?ってこと」


「っ……」




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