キミが望むのなら
うつむきなら、とぼとぼと歩く。
――『下ばっかり見てたら、こんな綺麗な満月だって見れないよ』
ふと、昨日の言葉が頭の中をかすめた。
「……ふっ」
本当にあたしって、下ばかり見てた。
そんな事実に、なぜか笑ってしまった。
……そういえば、昨日の彼は一体何者だったんだろう……?
名前を聞くこともなく、いなくなってしまった彼。
服装はTシャツにジーンズという、とてもラフな格好。
そんな格好ってことは、この近辺の人?
近くにマンションがあるから、そこの人かな……?
考えながら歩くと、自然と足が公園に向かっていた。
昨日の彼がいるとは限らない。
ましてや、彼がいたとしても、話しかけられるかどうか……
それでも、歩き出した足は止まらなかった。
公園に着き、昨日と同じ場所で立ちつくす。