プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ

 潤哉さんにはなんて言おう? 出張先でトラブルがあって……今夜は帰れないとか。

 ミシェルのことを言ったら納得するかな、それでも市ヶ谷副社長のことを聞かれたら、どう説明したらいいだろう?

 普通に言えば分かってくれるかな? ヘンに誤解されたら困るし……。

「それとも、簡単に浮気されるとでも思っているのかな、君のダーリンは」
「そ、そうじゃないですけど……」
「顔に出てるよ、困ったなって。束縛男には苦労させられるね」

 からかい含みの笑い声に、ますます私の顔は熱くなる。

「じゃあ、分かった。この件は僕と君との二人だけの秘密にしよう。ここはあくまで仕事上のこと。京都にいる友達に会いに行きたいって言ったら?」

「でも、私、もう嘘はつきたくないって思ってるんです。今まで……それで苦しんできたから」

 たくさんの嘘と真実に振り回されながらやっとの想いで、今の二人になれた。

 だから結婚した時に潤哉さんと決めたのだ。嘘は混乱の元になるだけ。隠しごとだけはしないようにしようねって……。

「じゃあ、彼の気持ちを信じてあげることだね。彼のようなタイプは、少し振りまわすぐらいがちょうどいいんじゃないか? 君だってその度に彼に愛されて幸せになれる」

 なんだか恥ずかしい。見透かされたように笑われてる。潤哉さんが聞いたら不機嫌になっちゃうんだろうな。

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