プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 私は現実に戻ってケータイの名前を見る。

「潤哉さん」

 嬉しくて、弾かれたようにオンを押して耳にあてがう。すると一呼吸置いて、愛しい人の声が私の名前をやさしく呼んだ。

『美羽?』と。

『……京都には到着した?』
「はい。さっき……」
『今はひとり?』

 確かめるように潤哉さんが言う。

「あ、大丈夫ですよ。ちゃんと市ヶ谷副社長は紳士でした。それに彼には」

 ……ミシェルのことが浮かんで、そこから私はしまったと思った。

『彼には?』
「いえ」

 さすがに秘密のことを言うわけにはいかない。

「明日、清水寺までお送りして、それから東京に戻る予定です。ちょっとの間……寂しいけど」

『君が、だろ?』

 小さく笑い声を立てる彼に安心して胸が熱くなった。

 少しそこからお互いに黙りこむ。彼が今マンションの部屋にいることだけはなんとなく分かった。

なんだか離れていることが恋しくて……。

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