プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 ロンドン支社を任されて約一年半――。


 プロジェクトも軌道に乗り、東京本社へ戻ってはどうかとCEOから話をいただくことができた。

 美羽は僕以上に喜びを見せ、これまでの仕事を労うように、何度も良かったですね、と笑顔を咲かせた。

「帰国したら一番にしたいことは?」
「一番に……聞かれるとすぐに出てこないけど」

 ほんのり頬を染めながら美羽は知らないフリをする。昔から彼女は嘘のつけない子だ。僕はそんな彼女が可愛くてついイジワルをしたくなるけれど。

 辞令が下りて東京本社に入った九月、そうそう浮かれてはいられない現実が待っていた。

「副社長の交代?」

 CEOは何も言っていなかったが、ビリー・ハウエル副社長がロンドン支社に行くことになったようだ。

 彼は喜んでいたが、僕は複雑だった。

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