天使の舞―前編―【完】
アマネが、手の中の剣を高々と振り上げる。


そこに居た皆が、息を飲んだ瞬間だった。


「や~め~て~!!」


上空から、悲鳴にも似た叫び声がこだました。


乃莉子が力の限り、声をあげたのだ。


アマネが、次の動作をためらい、声のした方を仰ぎ見た。


剣を振りかざしたまま、深紅の瞳が乃莉子を捉えた。


「やめてー!!
アマネ様!お願いっ!」


乃莉子は精一杯叫び、窓から身を乗り出して、懇願する。


「私のために誰かが傷付くなんて、いや~!」


アマネは、ゆっくりと腕を下ろした。


< 145 / 230 >

この作品をシェア

pagetop