天使の舞―前編―【完】
それはキャスを激昂させるのに十分なものであった。


ベットの上で乃莉子をその腕に抱き、肌がむき出しになっている胸元に唇を這わせ、覆い被っている、アマネの姿が目に入ってきたのだ。


乃莉子はというと、だらりと腕を投げ出して、体に力が入っていないように見える。


アマネの手に余る程に抵抗した乃莉子は、魔力によって動きを封じられ、自由を奪われていたのだ。


「乃莉子から離れろ!」


瞬間アマネは、凄まじい勢いで、吹き飛ばされた。


キャスの怒りを浴びて。


深海の瞳となったキャスパトレイユの眼力で、アマネは扉に叩きつけられたのだ。


扉の外に控えていたシラサギは、ドスンという音に驚いて、遠慮がちに扉を開けてみた。

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