天使の舞―前編―【完】
一歩前へ出て、膝をつき、アマネは真剣な表情をウェルザに向けた。


そして軽く深呼吸をする。


アマネの目の前に居るのは、玉座に雄々しく優雅に座る覇王ウェルザ、隣には王妃シンシア。


アマネは、シンシアをチラッと見てから、ウェルザに進言した。


「我が父、魔王アカツキは、天王妃シンシア様を欲しております。
父をここへ…。
王妃様の側へ呼ぶのは、危険です。」


息子に対してさえ威圧的な魔王とは違い、天王はどこか親しみの持てる人物であった。


雄々しい中にも穏やかさがあり、優しげな中にも凛々しさが伺える。


アカツキのように、力でねじ伏せるのではなく、ウェルザには包み込み受け入れる寛容さが、にじみ出ていた。


「そうか…。」


そう言って微笑むウェルザには、間違いなく上に立つ者の威厳があった。


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