天使の舞―前編―【完】
ウェルザは大して動揺した風もみせず、シンシアに視線を投げる。


そのシンシアも、さして驚いた様子はなく、アマネを淡いブラウンの瞳で見つめた。


「アマネ…。
アマネに会うのは、初めてなのよね。
でも私、あなたに初めて会う気がしないわ。
あなたアカツキに、よく似てるんですもの。」


シンシアは懐かしい者を見るように、アマネを眺めている。


「アカツキはね、とにかく真面目でね。
優しい素敵な王子だったのよ。」


遠い昔に思いを馳せて、シンシアはアマネに、微笑んだ。


優しい…?あの父が…?


アマネは、思いがけないシンシアの言葉に、少し眉を潜めた。


「おそれながら、王妃様。
聞きたいことが、ございます。」


アマネは、どうしても知りたくなった。


だったらなぜ、魔王ではなく、天王を選んだのか?

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