天使の舞―前編―【完】
「冗談やめてよ。
本当に迷惑なんだけど。」


乃莉子の拒否に悠は言葉ではなく、不敵な笑みを返した。


「お前、俺が誰だか分かってるよな?
天界の王子なんだぜ。
迷惑なんて言われたのは初めてだ。」


たぶん、気を悪くしたであろう乃莉子の言葉なのに、悠はまだ不敵に微笑んだまま、心なしか嬉しそうにさえ見えた。


今まで声をかけては、その場しのぎの恋愛を楽しんできた王子は、女性にこんな言葉を言われた事はなかったのだ。


天界の女性達は皆、王子に従順で口応えはおろか、王子に気に入られようと必死だったのだから。


すると何気なく悠は、手のひらを宮田に向けて差し出した。


一瞬悠の手のひらの上に、細かな羽毛のようなモノが舞い上がった…気がした。


乃莉子には、そう見えた。


悠は手のひらに、ふっと息を吹きかける。





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