天使の舞―前編―【完】
仕事に追われて気がつけば、乃莉子の帰りの時間になってしまっていた。


アパートに帰るまで、落ち着いてゆっくりと、あのウサン臭い彼の事を、考える余裕のなかった乃莉子。


一人暮らしの部屋は、お気に入りの家具や小物に囲まれて、寛げる空間になっている。


掃除だって、暇さえあればやっていた。


そんな癒しの空間に入ると、乃莉子の目に飛び込んできたのは、有り得ない光景だった。


咄嗟に理解できなくて、じっと見つめる。


しばらくの沈黙…。


乃莉子は、自分の目を疑いたかった。


「どういうこと!?
何で私の部屋に、アナタが居るのよ!」


初日だからと先に帰った悠が、当たり前のように、乃莉子の部屋で寛いで居た。


「だって乃莉子は、俺のヨメだから。」


そう言って悪びれず、悠はニッと微笑んだ。
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