天使の舞―前編―【完】
「妃とか、王子とか…。
そんな単語、今まで私には無縁だったから…驚いたのよ。
マンガみたいな話よね。
本当に悠くん、王子なの?
証拠は?」


興味津々で乃莉子は、悠に詰め寄った。


本来、奥手で人見知りの乃莉子。


でも、何故だろう。


この、上から目線の俺様天使が、余りにも人懐こく側にいるもんだから、朝からの警戒心が解けてしまっている。


無防備に、綺麗な二重の瞳で悠を見つめる乃莉子。


その愛くるしくも整った、他意のない表情を見て、悠はまたもドギマギしてしまう。


正直悠は、天界の娘達とはどこか違う乃莉子を、気にせずにはいられなかったのだ。


悠の顔色を気にしなかったり、反抗してみせたり、美味しい料理を作れたり、愛想笑いをしなかったり・・・。


やべぇ…。
俺、こいつに本気になりそうだ。


あんな啖呵切って、人間界に渋々来たのに。俺、カッコ悪。


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