天使の舞―前編―【完】
悠は、下を向いて小刻みに肩を震わせる、乃莉子の隣に移動して座る。


そして、少し冷静さを取り戻したような乃莉子の体を、そっと自分に傾けさせた。


乃莉子は何故か、悠のその手を拒む事はなく、もたれるように体を預ける。


悠は細心の注意を払って、両腕の中に乃莉子をふわりと包み込んだ。


胸に乃莉子の重みを感じた悠は、力一杯乃莉子を抱き締めたい衝動にかられたのだが。


でも乃莉子の頬を伝う一筋の涙が、悠のそんな欲望を押さえてくれた。


大切にしたい。


そんな想いが、悠の中に芽生えていた。

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