スイートなメモリー
ハッピーウェディング、なにもかもにアーメン
「前崎さんホントに綺麗になりましたよねえ」
以前だったら、色々と深読みをしたりして、前は綺麗じゃなかったのかと噛み付いていたことだろう。
けれど、前に比べてずっと綺麗になったということであれば喜びこそすれ、怒るようなことではないと、私はエステティシャンの手に身体をゆだねながら考える。
自分でも随分穏やかになったものだと思う。
迷いはなくなった。
結婚を決意してから、迷いがなくなったのだと思う。
それまでは迷うことばかりだった。
自分が愛されているのかどうかも不安だったし、自分が相手を愛せているのかどうかも不安だった。
ただ、どうするのがベストかなんて、そんなのは誰にもわからないし、結局は自分で決めることなのだと思う。
良いか悪いか、それが普通なのか異常なのか。
誰かが決めることじゃない。
自分で決めることだ。
自分が納得いかなければ、どうしようもない。
結婚を決めるまでにいくらの時間もかけなかったことについて、友人からも色々言われた。
確かに少々思慮が足りないと思わないでもなかった。
けれど、私は迷っている時間が惜しかったのだ。
もしかしたら、逃げたのかもしれない。
けれど、逃げるしかできなかった。
迷っていたら、どこにも行けなくなってしまような気がしていたのだ。
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