思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~

「勝頼様……岩櫃城に来てくれるでしょうか?」


私はそんな不安を口にしていた。

ここは真田屋敷の大広間。

昌幸様と帰ってきた私は夕餉のためにここに来ていた。

大広間には昌幸様、信幸様、幸村がいる。

夕餉が運ばれてくるのを待っていた。


「真琴殿はよく頑張りましたよ。あとはお館様のご決断次第だ。」


信幸様が慰めてくれた。


「ありがとうございます。」


やっぱり信幸様は紳士的な方だ。


そして…気になって信幸様の隣に座る幸村をじっと見つめてしまった。


……幸村は難しい顔をしていた。

なんだかもどかしそうな…そんな感じ。


本当は幸村に何か言って欲しくて。

期待している自分が恥ずかしい気がしてならない。

とりあえず待ってみた。

幸村の言葉を。


「……………。」

「……………。」


幸村も私に何か言いたそうなのだが…言葉が出てこないみたいだった。


この様子に昌幸様も信幸様も息を飲む。


「えっと…だな、真琴、、、」


幸村が言いかけたその時だった。


___スッ


「失礼いたします。夕餉をお持ち致しました。」


襖が開き数人の侍女さん達が夕餉を運んできた。


「あ……うん。えっと……」


幸村は戸惑って口をパクパクさせていたが、


「さぁーて、夕餉にしようか!」


昌幸様の一言で言葉の続きを聞けなかった。


すごく期待していたが仕方ない。

私は夕餉に手を付け始めた。


そしていつも通りに完食し、部屋に戻ることになった。





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