思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~

✳︎side幸村✳︎

「はぁ〜……」

俺は思わずため息をつく。

そして畳の上に寝そべる。

夕餉の後に自室に戻った直後だ。

なんとだらしない……と思われるかもしれないが今は構わない。


「なーんで真琴ちゃんに何も言わなかったのさ?」


天井裏から声が聞こえる。

佐助だ。

天井裏の板を外して一回転しながら部屋に降りてきた。


「……俺だって何か言いたかったよ。」

佐助の問いかけにボソリ呟いて返す。


そう。

本当は兄上よりも先に真琴に話しかけるつもりだった。


「そのために真琴ちゃんに何て話しかけようかまで考えていたのにね〜」

佐助がニヤニヤしながら言ってきた。


よく人の行動を見てる奴だ……。

そんなところまで見られてたとは。


「信幸様も全く同じ事を言うなんて予想外だった…って話でしょ?」

「あぁ。先に言われた挙句、言う事まで被るとはな……」

「それにしたって機転効かせて何でも言えばよかったんじゃないの?」


佐助の言葉に俺は詰まった。

自分でも驚きだった。

真琴のことはいつもそうだ。

頭が真っ白になって何も考えられなくて……。


「そうだな……」


そんなもどかしい思いを佐助はすでにお見通しのようだった。


「今からでも遅くないぜ?何でもいいから話してきなよ。」


そう言って俺の体を起こす。


そうだ。今からでも遅くない。


「佐助!礼を言うぞ!」

「はいはーい、楽しんできな〜。」


佐助が困った様に笑いながら俺を見ていた。


俺は障子を勢い良く開いて早足で真琴の元へ向かった。

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